M子と母親の会話です。「なぜ、もっと早くそのことを話してくれなかったの?そんなに不安なら」「だって、日が迫ってだんだん不安になってきたんだから仕様がないでしょ。それにお母さんたちが、あんまりすすめるもんだから……」「不安なんて、誰にもあるものよ。私にだって結婚する時はあったわよ。でも、結婚してみたら、その不安も少しずつ消えていったのよ。それも、当人の努力しだいじゃないかしら。……」「でも、どうしても自信がないんなら、そのことを先方に告げるしかないでしょ」M子は相手の男性に〈どうも自信がない〉という気持ちを告げたのですが、先方はびっくり仰天。当然です。相手の男性は、〈考え方に違いがあるのは当然。それをなんとか努力して一緒に生活するのが結婚というものじゃないか〉とM子を説得しようとしたけれど、M子の気持ちは変わらないのです。「その違いが何かを彼は理解しようとしないんです。違いが分かった上で、お互いに合わせる努力をするというのでなければ……」「どうしても駄目というのなら破談にするしかないが、今さら、式と披露宴を中止するわけにはいかないから協力してくれ」と言われ、とりあえず挙式と披露宴だけは予定通り行い、それが済んだ後で、なおM子の気持ちが変わらなければ破談にするということで、話は一応決着。そして、先方の願い通り、M子は自無垢で装った花嫁姿で神前で挙式。披露宴がそれに続き、こうして一連の「行事」を終えたと言うのです。しかし、結婚の「行事」はそこでストップでした。予定していたヨーロッパへのハネムーンもキャンセル。もちろん、双方は冷やかな挨拶を交わして、それぞれわが家に戻ったのです。
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