私は驚いた。彼女の言葉もさることながら、まだ会ってもいない彼について語る彼女の顔に、すでに恋する女の輝きを見たからだ。「こんなのってありだろうか」私は呆然と呟いたが、現実には「あり」だったらしく、彼女はさっさと婚約し、これまたあっという間に結婚して、今や三児の母である。そうかと思うと、恋愛は奔放に楽しみながら、結婚はお見合いと決めている人もいた。なぜそんなことをしなくてはいけないのか、私にはまったく理解できなかったが、とにかく彼女は「結婚を前提としないなら」という約束で恋人をつくり、「結婚を前提とした」お見合いをして結婚した。「それでいいの?」と聞いた私に、「これでいいのよ。両親が喜んでくれればそれでいいの」と、言い切るのである。こうなると、子供の頃からの信念は揺らぎ始める。本当だったら、恋愛結婚こそ結婚の王道だと言いたいところなのだが、純粋で真摯ではない恋愛結婚もたくさん見てしまった。多くの恋人とつきあっていながら、なかなか結論を出さず、「いちばん出世しそうな男を選ぶんだ」と舌を出した人にも会った。「司法試験に合格したら、彼のこと好きになるつもり」と言った人もいる。私だって、皆に「値上がり株を買ったじゃない」などと言われている。私が結婚したとき、夫の太郎は大学院の修士課程の学生だった。株にたとえるなら、将来どうなるかわからない弱小株だったはずだ。けれども、結婚してから、彼は社会的にはどんどん変身したと言わざるを得ない。まず、結婚してすぐ、博士課程の学生となり、授業の手伝いをするティーチングアシスタントという身分を得、非常勤講師を務め、その後、運よく就職して常勤講師となり、助教授、教授と昇格してきた。「なんだかんだ言ったって、結局、○○も値上がりしそうな株を選んだのよ。だって、言ってたじゃない。Tさんはきっと大学の先生になると思うって。そういうの、先物取引って言うのよ」さ、先物取引。そんなつもりはなかったが、けれども、私がなんの計算もしていなかったかというと、そうとは言い切れない。偉くなってほしいと思ったことは本当に一度もないが、人類学の先生になりたいという彼のエネルギーを信じていたのは確かだからだ。「俺なんかどうせ駄目だ」と言っているような人だったら、結婚しなかったかもしれない。
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