ホテル客を目当てにしている、ショッピング街というか、繁華街を歩いてみた。狭い道を挟んで、シーフードを売物にするレストランやみやげ物屋が集まり、あいたにスーツと水着が並べてつるしてあるブティックがあったりする。と思えば、「魅惑な離れ島へどうぞ」「世界最大の仏教遺跡ボロブドゥールヘ」などのポスターがいっぱいの、旅行代理店も少なくない。門前市をなす、という言い方が適当かもしれないが、それはそれで、店先をひやかしながらの散歩も結構楽しい。だが、路上でのしつこい物売りには辟易させられる。アクセサリーや木彫りの小物を手にした男や女や子どもらが、道をふさぐようにしてなかなか離れない。こんな時は、スター(済みました)、ティダーマウ(欲しくありません)と優しく断ればよいそうだが、ついつい声のトーンが高くなってしまう。スティア氏が、バリ島についてかねてから抱いていた不安の中に、島の急速な観光化があった。それによって外貨の多くは一部の者、例えばホテルの所有者とか、旅行会社とか、ガイドとかいった人たちに吸いとられ、バリの人びとはそのおこぼれにとどまってしまう。こうした残り物あさりのなかでは、人びとのあいだであきらめが支配することになる、という考えである。たしかに、物売りの粗末な身なりや、挑むようなこびているような目付きを見ていると、スティア氏の不安の通りに物事が進んでしまっているような感じがする。